「壁」という考え方があるのは分かったけど、騎乗中や、馬と接してる時にも使えるの?そもそも、必要なの?
そんな疑問にお答えします!
以前、僕はこのような記事を投稿しました。
乗馬での、「壁を作る」という考え方を解説!その1:基礎編今回は、「壁」が必要な理由と、作るイメージについて、解説します!
なお、この「壁」は、ある程度馬に乗れるようになってから意識してもらう考え方です。
初心者の方は、参考にはなるかもしれませんが、無理にチャレンジしないで下さいね。
前回の復習
さて、前回の記事では、「壁」という言葉の意味についてお話ししました。
簡単に復習すると、「僕たちは馬という爆弾(エネルギーの塊)の周りに、体で壁を作り、その開け閉めをする事で、エネルギーの方向をコントロールしてる」という内容でしたね。
分かりやすい例として、拳銃の弾丸を挙げました。拳銃を打った時、弾丸が前に進むのは、前以外のパワーの逃げ道が塞がれてるからですよね。
この考え方は、馬でも応用できますよという話でした。今回は、その応用についてのお話です。
壁を作るイメージ
では早速、壁を作るイメージをしてみましょう。
なお、今回は、上下の壁は一旦省くとして、前後左右の壁を考えてみます。
イメージとしては、馬の周りに、八方向のエネルギーの逃げ道があると思って下さい。
この逃げ道を、開けたり閉めたりして馬のコントロールをするのが、壁の応用になります。「壁」と言うより、「扉」ですね。
例えばここで、後ろ3つ以外の矢印を塞げば、馬は後ろに進みます。
これが、騎乗時でいう、後退の指示になります。
同じく、下の画像ように矢印を塞げば、馬は右斜め前に進みますね。
これは、斜め横歩や、隅角通過の指示になります。
僕たちが、押し手綱と開き手綱、内方脚と外方脚を使い分けるのは、この扉の開け閉めをするためです。
開き手綱は扉を開ける。押し手綱は扉を閉める。脚も扉を閉める指示ですね。
例えば馬を外に押し出したいなら、ある程度推進をかけた上で、内方脚と内側の手綱で馬を押し出し、外側の手綱を少し開く事で、馬を外側に導きます。
すると、この先程の画像と同じになるんです。
どうして、壁が必要なのか
ここまで聞くと、そんな面倒な事を考えなくても、馬を押して引いてと考えれば良いじゃんと思う方もいるでしょう。
ですが、この「壁」は、絶対に必要な考え方になります。なぜかというと、「馬に自発的に、姿勢を作ってもらうため」です。
というのも、馬って、必ずしも力で指示を聞くわけではありません。外に引っ張ってるのに、中に入られたというトラブルは、誰しも経験してるでしょう。
その様に、力で抑えられなくなった馬を制御するには、馬に自分から、求める形をとってもらうしかありません。ここで出てくるのが、壁なんです。
例えるなら、羊と牧羊犬のようなものです。
行っちゃいけない方向に立ち塞がり、あっちなら逃げられるぞと逃げ道を提示する事で、羊を引っ張らずに目的の場所に誘導するのが、牧羊犬ですよね。
それと同じ事を、僕たちは馬と接しながら行います。
内側は駄目。でも、外側なら良いよ。そうして、扉を開け閉めする事で、馬に自ら、求める形を作ってもらうんです。
動物と言うのは不思議なもので、「壁」を感じると、直接的な力をかけなくても、それを意識するようになります。
牧羊犬も、直接噛みついたり、飛び掛かったりはしないじゃないですか。
要は壁って、「これは突破できない」というプレッシャーなんです。精神的なものなんですね。
例えば、障害のバーや、サークルレッスンのラチなんて、馬はその気になれば、体当たりで壊せるじゃないですか。
でも、やりませんよね。それは、障害のバーやラチを、「壁」として認知してるからです。
大事なのは、馬がそれを、「壁」と感じているかどうかです。
逆に言えば、壁と感じれば、どんなに力が弱くても、馬は指示を聞きます。
壁を作る際の注意点
この、「壁」ですが、うまく使いこなす事が出来れば、とても役に立つ考え方です。
ですが、実用する場合、3点ほど注意が必要です。
- 壊されたら、壁ではない
- 効果が強すぎる
- 求める形を、人間側が理解してる必要がある
解説していきますね。
先程言った通り、「これは突破出来ない」と精神的に感じるものが、壁になります。
という事は、突破出来ちゃえば、それは壁として機能しないんですね。
例えば、一度ラチから脱走するのが癖になった馬は、もうラチを壁として認知しません。
既に「突破出来たもの」ですからね。バリアとしての役目は、もうないんです。
これは、僕たちの手綱や脚も同じです。
手綱を引っ張られても、引っ張り返せば振りほどける。内方脚を使われても、それ以上に体重をかければ押し返せる。そんな経験を積ませると、指示は「壁」として機能しません。
もしかしたら、レッスン中に、「壁を壊されるな」と指導を受けた人も、いるかもしれません。
それは、この事ですね。要は馬に、「力づくで何とかなる」と思わせるなという事です。
もし馬が、壁として認知をしてれば、障子紙でも、有効な壁になります。
ただ、もし馬が、壁として認知してなければ、障子紙なんて、簡単に破られますよね。
大事なのは、最初の最初から、馬に「壁は壊せる」という経験を積ませない事です。
といっても、自分の騎乗に芯や自信が持てない頃は、それが難しいんですけどね。
先程、僕は、障子紙でも壁になると言いました。
ですが逆に言えば、ちょっとした事でも、それを馬が「壁」と認知すれば、馬に影響を与えてしまうんです。
これは、馬という動物の特性も関係しています。というのも、馬は自分より小さな動物や、ちょっとした物音にも反応するじゃないですか。
そのため、人間からしたら僅かな事でも、それを壁として認知する場合があります。慣れてない馬からしたら、ビニール袋は、とんでもない危険物なんですね。
これは、騎乗中にも起こり得ます。例えば、「レッスン中に、突然後ろに下がり出す」です。
もちろん、乗り手が手綱を引っ張って邪魔してる可能性もありますが、このトラブルの多くは、後退させたいわけじゃない時に発生します。
つまり、後退させるくらい思い切り引っ張らなくても、壁を感じれば、馬は後ろに下がっていくんです。これが、「壁」の強さです。
上手く使えば、とても役立つ壁も、悪い方向で出来るとけっこう厄介です。
何と言っても、精神的なものですからね。手綱を楽にするだけじゃ、直らない場合があります。
各項目での壁の作り方と、解除の方法については、別に記事を作ります。
今回は、丁寧に扱わなきゃいけないものなんだと覚えておいてください。
壁を使って、馬に形を求める時に、特に注意したいのが、扉の開け忘れ、閉め忘れです。
例えば、前に進んでほしいのに、乗り手が前に壁を作っていたら、もちろん前には進みませんよね。
意外とこれ、多くの方がやってしまうんですよ。
駈歩発進をしてほしいのに推進が足りなかったとか、馬を外に押し出したいのに手綱を楽にしてたから、脚と同時に馬が前に進んでしまったなどです。
扉を閉め忘れてたら、パワーはそこからも漏れていきます。つまり、求めてない方向に、馬が動く可能性があります。
逆に扉を開け忘れてると、馬のパワーは出ていきません。そうすると、求めた方向に進まなくなるんですね。
そのため、壁を使って馬を制御する場合、扉の開け閉めを完璧に行う必要があります。
要は、乗り手はこの指示をして、馬はこの形になるというのを、しっかり理解してないといけません。
これが、初心者の方に壁を理解しろと言っても、難しい理由です。自分のどの指示が、馬にどんな効果を与え、その結果馬がどうなるというのを、頭でつかみきれてないからです。
日頃から、「指示だけ」に注目するのではなく、「馬がどうなるか」まで、意識を向けるようにしましょう。
なかなか難しい作業ですが、本格的に壁を必要とするのは、馬に姿勢や踏ん張りを求めるようになってからです。焦らず、取り組んでくださいね。
まとめ!
今回は「壁」の、騎乗時での応用について解説しました。
精神的なものなので、理解が難しいです。ですが、馬を扱う上で、とても大事な考え方です。
例えば競馬のゲートも、この応用です。狭い空間に馬を入れ、前の壁を解放する事で馬が跳び出す仕組みです。
他にも、調馬索は壁の応用です。立ち位置や追い鞭で壁の場所を変え、馬への指示を変えるんですね。
このように、騎乗時に限らず、馬を扱う全てに応用できるのが、「壁」という考え方になります。力で勝てない馬を、人間の制御下に入れるには、必ず理解しないといけません。
なお、エネルギーの開け閉めは、隅角通過で今回説明できたように、初心者レベルのレッスンでも意識できる考え方です。
これまで考えた事がない人は、まずは余裕を持てるレッスンレベルから、パワーの流れを考えてみて下さい。
ご覧いただき、ありがとうございました!
わかりやすい説明できる、壁を作るイメージが湧きました。馬に自ら動いてもらえるよう、常日頃から自分の指示が馬にとってどのように伝わっているのか、馬の立場を想像できるようになることが必要なのですね。初心者のわたしの場合はそれ以前にまず、どのような指示が必要なのかを理解することからですが。
おがわ部長のこれまでのブログや映像を見直す度に、「こういうことか」という新発見があります。これからもどうぞよろしくお願いします。
「馬側の目線に立つ」。言葉で言うのは簡単ですが、これがなかなか難しいです。
でも、説明されたら分かるという事は、いずれ辿り着く事は出来たという事です!自分の才能に自信を持って、頑張っていきましょう!