
乗馬の神髄とは!なんて事を考えてみたけど、人によって答えは違うし、見当もつかない…。これ!って考えはあるの?
そんな疑問にお答えします!
今回は、乗馬で一番大切な考え方、「乗馬はコミュニケーション」について解説します!
ただ、今回の内容は、難しい事を考えず、ただ乗馬を楽しみたいという人には、ちょっと厳しい内容かもしれません。俺はそこまでして、馬に乗りたくないって方も出てくると思います。
自分ではなく、「馬」に焦点を当てて、馬と接する時間を楽しんでくれている方向けの内容になります。ご了承ください。
乗馬はコミュニケーション

さて皆さん、乗馬で一番大切な事って、何だと思いますか?
人によって、この質問の答えって大きく変わると思います。
馬への理解という方もいますし、全てを理論立てて説明できる知識の多さという方もいますし、馬の主張以上に自分の主張を貫く意思決定という方もいます。
ですが、改めて僕は、「乗馬はコミュニケーション」だと思っています。
そう思う理由:僕たちは馬に、お願いをしてるから
なぜそう思うかというと、結局、動いているのは馬だからです。
そして、僕たち人間は、動いてもらってる側だからです。
馬は、本来、乗せる必要の無い人間を乗せ、本来、やらなくていい動き方をして、本来、跳ばなくていい障害を跳ぶわけです。
要するに、僕たちは馬にお願いをして、馬はそのお願いを聞いてくれてるんですね。
間違っても、そうプログラムをされたからではありません。
例えば、両足をずらし、斜めに合図をしたら駈歩をしてくれるというやり方は、そうした方が、馬が駈歩をしやすいからであって、動作を約束してくれるものではありません。
でも、僕たちは時々、正しく指示をしたのに馬が動かないと言う訳ですね。
言葉はきついですが、それはお門違いです。そのやり方じゃ、そのアシストだけじゃ、馬にやってもらうまでのお願いになってないから、馬は動かないんです。
教科書が招く勘違い
僕が時々、教科書的な馬術の考え方を否定するのは、これが理由です。
教科書に書かれている技術や見本は、既にお願いを聞いてもらえるようになった馬での、いわば「最終結果」なんですね。
あたかも、全ての馬は言う事を聞く。このやり方さえ覚えれば間違いないという書き方をしていますが、そんな事は絶対ありません。大事なのは、そこに書かれていない、馬が言う事を聞いてやろうと思うまでの過程なんです。
例えば、駈歩発進を例に挙げてみましょう。
- 駈歩を発進させるには、その前の収縮状態が不可欠
- 収縮状態を作るには、前進気勢が必要
- 前進気勢を作るには、馬のやる気を高めないといけない
- 馬のやる気を高めるには、馬の感度を上げる必要がある
- 馬の感度を高めるには、人間の指示を通るようにしないといけない
- そのためには、一歩ごとの随伴や、馬が気を抜いた瞬間への合図が必要
ここまで出来て初めて、「脚をずらして合図をしたら、馬は駈歩をする」なんですね。だからこそ、乗馬は難しいんです。
また、馬は人間よりも大きく、力強い動物です。
なので、無理やり動かすという事は出来ません。馬が動くという事は、そこには必ず馬の同意があります。
改めて、僕たちが行っているのは、「お願い」なんですね。
先程解説したようなプロセスを経て、ここまでお膳立てをしたから、やってくださいというお願いです。
ところが、ここまでやっても、馬によっては、まだ動いてくれません。
頭が重いから、もっと持ち上げてくれという馬もいれば、背中が痛いから、もっと優しく乗ってくれという馬もいるからです。
また、純粋に、今日はもう走りたくないという馬もいるでしょう。ここでも、教科書通りでは上手くいかないんですね。
※この内容に関連した、ちょっとした小話はこちら。

馬主体で考える=コミュニケーション

だからこそ、僕たちに必要なのは、馬は今、どの段階で困ってるのかを考える能力です。そして、それによって自分のサポートを変えてあげる事です。
これが、コミュニケーションという考えに繋がります。
コミュニケーションは、自分の意志だけを一方的に伝えるものではありません。それは指示、命令です。
相手がいて、相手がどういう状況かを察し、相手が理解できるように伝え方を変えるという方法です。
そのためには、僕たちが、「馬ってこうだから」と、勝手に決めつけてはいけません。
例えば人間社会の場合、「白人の方だから、良かれと思って「ハロー」と声をかけても、その方はフランス人だったので意思疎通が出来なかった」という事も有り得るわけです。
これは、僕たちの決めつけが招くトラブルです。ここで、「なんでハローって言ってんのに、返事しないんだよ!」とは言いませんよね。
同じように馬も、教科書では、重心を後ろにした方が駈歩は正しいと書かれますが、首を伸ばして前のめりに走った方が、楽に駈歩を出せる馬もいます。馬によっては、苦しくて指示を聞きません。
これも、決めつけによるトラブルですね。なので、「なんで指示を聞かないんだよ!」というのは、おかしいんです。
教科書のやり方だけにこだわると、こういった悪影響があるんです。
大事なのは、あくまでも、相手主体の意思疎通がコミュニケーションだという事です。相手ありきのやりとりなんですね。
「自分はこうした」という事実はあっても、それで馬が理解できなかったら意味はありません。自分ではなく、「馬がどうなっている」に感覚を集中させるのが、乗馬なんです。
馬との意思疎通は誰でも出来るもの
ただ、幸いなのは、馬とのコミュニケーションは言葉を使わないという事です。
言葉が必要なら、言葉を覚える必要が出てきますが、馬は、「蹴られたら痛いだろうなー」などの、生き物として共通の感覚でコミュニケーションをしています。
例えば、後ろ脚に重心を乗せたいから、手綱を引いて首を起こして…っていうのは、同じように筋肉を使って動いている動物である以上はなんとなくは分かると思うんです。
最低限の馬の理解こそ必要ですが、僕個人の経験で良いなら、外国語を覚えるよりも、よっぽど楽だと思います。
だから、馬側の視点に立って考える習慣がつけば、意外と早く馬とはコミュニケーションがとれるようになります。
乗ってる最中のテクニックとして実行するのは、体を使いこなせるようにならなきゃいけないので難しいですが、頭では理解できるという段階に行くのは、とても早いと思います。それで良いんですよ。
覚えたての英語で話してみて、あれ?ここが上手く伝わらなかったな?となるのと同じです。乗馬も、頭で考えた方法を実際に試してみて、ここが伝わらなかったな?と訂正をすればいいんです。
乗馬を教えてくれる先生は、馬なんです。自分ではなく、馬の反応を見ながら、コミュニケーションを深めていって下さいね。
まとめ!
今回は、「乗馬はコミュニケーション」という、僕が大切にしている考え方についてお話ししました!
人によってはお説教みたいに聞こえたかもしれませんが、そんな意図はありません。馬の事を考えてあげて下さいねという事です。
個人的に思うのは、コミュニケーションという考えに入ってから、馬に乗るのは楽しくなるという事です。
なぜかというと、どの馬でも、同じように動いてくれるなら、そのうち飽きが来るからです。
もし、馬が取り扱い説明書のように段階を踏んだら動いてくれるのなら、そのあとやる事って、全て「作業」になっちゃうんですね。
でも、馬はそうじゃないんですよ。それぞれに違った体の特徴があって、違った性格があるわけじゃないですか。
なので、一頭一頭、乗りながら「この子はどんな子なんだろう?」と考え、それに合わせたコミュニケーションを試す事が出来ます。
そうすると、全ての馬が、違ったコミュニケーション方法を持っているわけですよ。飽きるどころか、終わりがないわけです。
本来、意思が通じない相手と、コミュニケーションがとれるって、それだけで楽しいものです。
外国の方と話せるようになった時、やった!嬉しい!と思う事はあっても、げ、通じちゃったよ…と思う事はないと思います。
確かに、馬を走らせるだけでも乗馬は楽しいですが、皆さんには、もう一つ段階を上げて、コミュニケーションの世界に踏み出してもらいたいです。
すると、馬との接し方の幅が一気に広がりますよ!
ご覧いただき、ありがとうございました!
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