騎座ってよく言われるけど、どんな意味なの?要は「しっかり座る」じゃないの?
そんな疑問にお答えします!
とりあえず、とても大事なものというのは、何となく分かると思うんですよ。騎座で押し出すとか、騎座の安定とか、ごく当たり前のように言われてますよね。
座り方には間違いないのですが、正しく「騎座」という考え方を理解する事で、乗馬のレベルは上がります。
今回は、騎座の説明と、効果やポイントについて解説しますね!
なお、ツーポイントでも騎座は意識出来ますが、今回は、座った状態での騎座の解説になります。ご了承ください。
騎座とは
結論、騎座とは、「馬の体と一体化するための座り方と動き」の事です。
こんな言い方をすると、意味が分からないと言う方もいると思いますが、本当に、この言葉の通りなんですよ。
例えば、誰かにおんぶしてもらっていたとして、その人が思いっきり走り始めたら、しっかり捕まりますよね。
やってる事は、それと同じです。要は、馬がどんな動きをしても、付いていけるようになる座り方の事を言います。
大事なのは、「付いていく」という事です。つまり、「ジッとしてれば良い」のではなく、馬に合わせて動くんですね。
例えばこの映像では、2歩ごとに駈歩の手前を変換する、連続踏歩変換という高等技術を行っています。
極端な事を言ってしまえばこれは、2歩ごとに馬が、右ジャンプと左ジャンプを切り替えているという事になります。
そんな馬の背中の動きに、ただ座っているだけで付いていけるわけがありません。乗り手も、馬の背中に合わせて、動く必要が出てきます。
ただ「座り方」を覚えるのであれば、それは「基本姿勢」です。騎座はそこから、求めるレベルが上がり、「馬への付いていき方」という考え方になります。
騎座が及ぼす効果
騎座の効果は4つです。
- 馬の負担にならない
- 腰を使った扶助が出来る
- 脚がより自由に使える
- 馬の動きに対応出来る
解説していきましょう。
駈歩でも前後や上下の動きがありますし、誘導でも横の動きがあります。その度に、背骨と人間のお尻がゴリゴリしていたら馬は溜まったものじゃないです。
その点、騎座を身に付ければ、馬の動きに付いていけます。
上に乗っている乗り手が、自分の動きに付いてきてくれるなら、馬にとってそれほどやりやすい事はありません。
結果、より大きな動き、複雑な動きをしてもらう事が可能になります。
これまで、扶助というのは脚で行うものだと思っていた方も多いと思います。
ですが、騎座を使って乗り手の体と馬を連結しておけば、乗り手の体重移動で、馬の背中や重心を操作する事が可能になります。先程の連続踏歩変換も、人間からの補助が必要な運動です。
例えば、これまで内方姿勢は、内側の押し手綱と内方脚で作っていました。
ですがそこに、騎座を使うと、乗り手の体重を外にずらして、馬の背骨を外側に持って行くというアプローチが追加されます。すると、内方姿勢で求める内側へのアーチが作りやすくなります。
結果として、脚に頼る事が減るため、脚をより自由に使えるようになります。
例えば、馬上で跳ねちゃうからと脚でしがみついていた人が、腰だけで馬に付いていけるようになれば、脚は合図に使う事が出来ます。
馬場の経路など、横誘導が出てくると、走行しながらの脚合図は必須になります。そんな中で、自分が振り落とされないように脚を使っていたら、誘導には回せません。
高度な技術になると、騎座が重要視される理由です。
「ただ座る」ではなく、「馬と連結」していれば、想定外の動きをされても、いきなり振り落とされる事はありません。
横っ飛びなどがその一例です。坐骨、左右の鐙だけの3点でバランスをとるよりも、股関節と太もも全体で鞍にくっついていた方が、簡単にはがれずに済みます。
騎座を作る際のポイント
そうなると、気になるのは「騎座はどう作るのか」ですよね。
ですが、騎座の「形」自体は、基本姿勢と変わりません。
こちらの記事で基本姿勢を解説していますが、言ってる内容は、騎座の注意と何も変わらないです。
正しい座り方って?乗馬の基本姿勢と騎座についてただ、騎座だからこそ、意識してほしいポイントはあります。
- 坐骨から太ももの先まで、広い「面」で馬を捉える
- 随伴を意識する
- 馬の重心と、自分の重心を意識する
解説していきますね。
股関節というと、太ももの付け根から先をイメージする方がいるので、あえて坐骨と言っています。
「股」と言われる部分の本当に真ん中から、太ももの骨の先端(膝上)までの、広い面で馬の体を捉えましょう。
馬体の形によっては、膝下(ブーツの一番上くらい)までを馬の体に添えて下さい。(直前の写真参照)
こうする事で、馬にくっついている面積が増え、馬からはがれにくくなります。
また、くっついている面積が多くなれば、馬の動きで一緒に動く面積も大きくなります。
お尻だけではなく、ウエストから下全てを使う随伴が可能になります。こうする事で、腰を使った扶助が可能になります。
膝下より先は、脚合図にも使いたいため、出来れば今説明した部分だけで、馬と同化出来るのが理想的です。
この時、膝を開いてしまうと、太ももの裏の一部しか馬体にくっつかなくなるので、なるべく爪先は真っ直ぐにしておいてください。人によっては、少々内股気味の方が良いかもしれません。
どんなに良い騎座を作っていても、馬自体の動きとシンクロしてなければ、馬の邪魔になるだけです。
ましてや、下半身全体で馬を捉えてるので、お尻だけの時より余計に馬が動きにくくなります。
騎座を意識する前の前提条件として、馬の動きを感じる余裕と、随伴の動きは覚えましょう。
馬の背中の中央に、乗り手の坐骨に接続するピンがあると想像してください。
僕たちは随伴をして、そのピンと坐骨の位置を合わせ続ける事で、馬との重心に同調する事が出来るようになります。
ピンと言われても、すごい抽象的ですが、あくまでイメージで構いません。
要は、馬の背中の中心という「点」を意識できるかどうかです。この点をずらす事で、僕たちは騎座での操作を行います。
ただ、注意してほしいのは、「お尻だけで座って全体重を乗せる」ではないという事です。あくまで先程解説したように、座り全体で馬を捉え、体重を分散した上で中心を意識してください。
体重の分散については、こちらの記事で解説をしています。興味があったら、ご覧ください。
体重の分散と、スリーポイントという考え方まとめ!
今回は「騎座」についての説明と、意識するポイントについて解説しました!
改めて、騎座は「馬に付いていける形」です。「この形」という正解があるわけではありません。ご注意ください。
以前僕は、正反動についての記事で、「鞍からはがれない」という言葉を使いましたが、その感覚が一番正しいと思います。
正反動を覚えよう!その3:体が跳ねる理由と、随伴の方法いかに、馬と座りをくっつけていられるかを考えていれば、お尻だけ、鐙だけというバランスや姿勢にはなりません。
自分の引き出しとして使えるようになるには時間がかかりますが、焦らず、馬の背中の動きを感じるところから始めましょう。
ご覧いただき、ありがとうございました!