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半減却を覚えよう!その3:ハミと拳で推進を受け止める

半減却って、馬を前に行きづらくしたまま、動かせばいいんだよね?とにかく、手綱と脚を使い続ければ良いの?

そんな疑問にお答えします!

第1弾では半減却をする意味。第2弾では、前のめりにさせずに馬を動かす方法について、解説をしました。

半減却を覚えよう!その1:半減却をする意味と、使う場面 半減却を覚えよう!その2:前のめりにさせずに馬を動かす

今回は、それらを踏まえて、馬のパワーの受け止め方について解説をしていきます!

MEMO
記事の最後には、同じ内容を解説した動画もあります!youtubeでは、1日1つ、馬の知識を届けてるので、興味がある方は、チャンネル登録をしていただければ幸いです!

「バランスを起こす」の限界

改めて、前回は、前のめりにさせない事で、馬の脱力を防ぐ方法をお話ししました。

ですが、実はこの方法、脱力を防ぐ事は出来るものの、馬の筋肉をしっかり使わせる事は出来ないんです。

なぜなら、頭を起こす行為は、バランスを起こすだけであって、筋肉を踏ん張らせる行為ではないからです。実際、僕たちも、上を向いたり、体を後ろに反らせるだけなら、筋肉を使わずに出来ますよね。

例えるなら、馬の頭を起こすのは、疲れてフォームがグダグダになっているマラソン選手に、しっかりと姿勢を作ってもらうだけなんですよ。

シャキッと動いてもらう事は出来ますが、それと、筋肉を踏ん張らせるは違います。

そのため、馬の筋力が必要になる段階になると、頭を起こすだけでは限界が来ます。

「バランスを起こす」の弊害

このような話をすると、その分、推進をしっかり使えば良いのでは?という方も居ます。

確かにバランスを起こす事で、お風呂でいう「栓」をする事が出来ます。そのまま脚や騎座を使えば、パワー自体は溜まるでしょう。

ですが、この方法には、大きな弊害があります。

それは、馬の背中や腰を痛めるという事です。

馬は、前脚と後ろ脚の間に、橋になるように背骨があります。

この背骨の上に、僕たちは座ってます。言い換えれば、背骨という橋に、体重を支えてもらってるわけです。

ところが、馬の頭を起こし、ある一定以上まで首が上がると、背骨が谷折りになっていきます。

すると、僕たち人間を支えてられなくなるんですね。

全ての物って、重さに対して尖ってるほど、その重さに耐える事が出来ます。本物の橋や、家の屋根って、上向きのカーブになっているから、車や雪の重さに耐えられるわけです。

これが、下向きのカーブになっていた場合、中央に重さが集中します。結果として、中央が耐えられなくなり、真ん中から壊れてしまいます。

馬においても、同じ事が言えます。

首を上げるだけでパワーを溜めようとすると、そのパワーが大きくなればなるほど、ハミにかかる力は強くなり、馬は首を上げていきます。

そうして、背骨の谷折りが強くなった所に、人間の体重が集中する事で、馬は背骨を痛めます。

ましてやパワーを溜めれば、馬の動きも大きくなります。その分、反動も大きくなり、背中にドカドカ座るようになればなおさらですよね。

馬を受け止める

以上の事から、ある程度以上の筋力を要求する時は、頭を上げずに馬を踏ん張らせる必要が出てきます。

ですが、以前から言っている通り、頭を下げてしまうと、馬は脱力してしまいます。

では、このような時はどうすれば良いのでしょうか?

ここで出てくるのが、「馬を受け止める」です。

例えるなら、馬の首を、長いバネだと思ってください。先端の重さに任せて楽にするから、バネが下に伸び、パワーが溜まりません。

そこで、僕たちが手綱を持ち、先端の重さを受け止めてしまうんです。そうすれば、バネは短く、圧縮された状態を維持する事が可能になります。

半減却の練習までいった方は、誰しも1回は、元気な馬を抑えた経験があると思います。馬が、周りの馬以上にパワーを出したいのは分かってる。でも、許しちゃったら抜かしていっちゃう。そんな経験をした事は無いでしょうか?

極端な事を言えば、馬を受け止めるのは、人間の方からその状態を作り出す事です。

パワーを出させた上で、それを抑えて、馬自体に踏ん張ってもらうんです。

馬を受け止める前提条件

馬を受け止める上で、前提条件となる項目があります。

  • 拳を繊細に扱える
  • 騎座が身に付いている

この2つですね。

例えば、皆さんが組体操をしたとしましょう。

土台をやってくれる相手が、いかにも細身で、フラフラしていたら、任せられませんよね。

馬を受け止めるという事は、馬の体の一部を支えるという事です。今回であれば、バランスだったり、パワーですよね。

それらを預けても、フラフラしない乗り手だから、馬は支えられる事を承諾します。

厳しい言い方ですが、腕が上下してる方のハミにパワーを乗せようとは思いませんし、引っ張ったら姿勢が崩れる方相手に、パワーを預けようとはしません。だからこそ、半減却は難しいんです。

もし、この前提条件がまだ身に付いてない場合、今回の内容はオススメしません。申し訳ないですが、出来るのは前回の内容までだと思います。

ただ、それでも指導員によっては、当たり前のように「半減却ー」って言ってくる場合があります。

そのような場合、その指導員は初心者向けのレッスンはしていないと思ってください。

具体的なやり方

さて、ここからは具体的なやり方を紹介していきます。

と言っても、途中までは、前回の「前のめりにさせない」とさほど変わりません。

同じ部分は簡単にした上で、今回は4つの項目を説明します。

  1. 推進を作る
  2. 馬を止め切らない程度に手綱を引く
  3. 推進を送り、口への違和感を乗り越えてもらう
  4. 前に出たパワーを、体全体で受け止める

解説していきましょう。

1.推進を作る

前回、お話しした通りです。

パワーが0の状態で、手綱を引いたり、拳を控えたりしても、停止や後退になってしまうからです。事前にしっかり推進を作りましょう。

2.馬を止め切らない程度に手綱を引く

この後、パワーを送った時に、馬が「ペースアップ」と判断しないためです。求めてるのは、「パワーを上げる」であって、「スピードを速くする」ではありませんからね。

この時、上方向に引いてしまうと、首が上がってしまいます。

肩や肩甲骨など、「上半身全体」を使い、拳の高さを変えないまま後ろに引き付けましょう。

また、大事なのは、「止め切らない程度」という部分です。

詳しくは後程解説しますが、馬が「引っ張られても前に進める」と思う程度の力にしてください。

3.推進を送り、口への違和感を乗り越えてもらう

基本的に、手綱を引っ張られたら、馬はブレーキと判断します。

ですが、そこで出力が下がっていったら、それ以上にパワーは上がりません。

そこで、「確かに手綱は引いてるけど、それでも前に進んでね」と、馬に推進を送ります。

先程、手綱を引く力を「止め切らない程度」にしたのはこのためです。乗り越えられそうな障害にする事で、馬から「前」という選択肢を消さないためですね。

もしこの時、拳の方が強ければ、前には行けず、馬は後ろに下がっていきます。

また、拳と脚が同じ強さだったら、馬は前にも後ろにも行けず、混乱してしまいます。

アクセルの方が1だけ強い。それで充分です。

前回も言ったように、手綱も脚も、丁寧に行ってください。時には、拳を楽にするという選択肢もあって良いですよ。

4.前に出たパワーを、体全体で受け止める

これまでのプロセスで、人間の負荷がありつつも、それを乗り越える道を馬が選びました。

あとは、そのパワーを、維持し続けてもらうだけです。

ただ、止め切らない程度の力だったとはいえ、引っ張られても進むという道を選んだ以上、腕力だけで支えるのは、次第に難しくなってきます。

そのため、腕だけではなく、腹筋や背筋を使ったり、上半身を後ろに残したりと、体全体を使って馬のパワーを受け止めましょう。

そうして、パワーを出したまま、ゆっくりの動きをするようになったら、今回の内容は完成です。

馬がその状態をキープしてるうちは、握りと腕力をほんの少し緩め、馬を楽にしてあげましょう。

なお、ここで注意したいのが、「人間が支えているから踏ん張ってられる」になると、僕たちが力尽きた途端に馬が走っていく事です。これでは、元気な馬を抑えてる時と、何も変わりません。

そのため、引き返す力が強いなと思った段階で、純粋にそれ以上の力で引っ張り、ブレーキをかけて下さい。

馬自体に制限速度を意識してもらう事で、自発的に「求めた状態」をキープしてもらいましょう。

詳しくは、こちらの記事で解説しています。興味があれば、ご覧ください。

勝手に後退する理由は?馬の力の抜き方と、制限速度の作り方

まとめ!

今回は、頭を上げるよりしっかりとした半減却として、「馬を受け止める」についての解説をしました!

ここら辺りから、半減却というイメージを持つ方が多いのでは?と思います。

ここまで来ると、「乗馬」ではなく「馬術」です。自分の騎乗だけに集中していては、上手くいかなくなってくる段階です。

1レッスンという限られた時間で、感覚を擦り合わせるのは難しいですが、その分、こうしてお話はしていきます。一緒に頑張りましょう!

ご覧いただき、ありがとうございました!

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