馬によって、走ってる時の体勢って違うよね。何か特徴にも違いがあるの?
そんな疑問にお答えします!
乗馬、馬術では、難しくなればなるほど、馬の重心を起こす機会が多くなります。
では、前重心はいけない事で、後ろ重心こそ正しい姿勢なのでしょうか?
いえ、そんな事はないんですね。要は、求めているものの違いなんです。
今回は、前重心の馬と後ろ重心の馬の、それぞれの特徴と、メリットデメリットについて解説しますね!
前重心、後ろ重心とは?
詳しくはこちらの記事で解説していますが、馬って、お尻の一番発達した筋肉から生まれるパワーを前に流す事で、前に進んでいます。
乗馬における、重心とバランスの確認方法(前後編)人間も、綱引きをするにしても、背中越しに重いものを引っ張るにしても、力を踏ん張る方向に体重を乗せていくじゃないですか。
同じように馬も、体を前のめりにして、前方向に進んでいきます。本来、馬って前重心なんですね。
ただ、これから解説していきますが、前重心をそのままにしておく事には、馬術的なデメリットも存在します。
そこで、前に傾いている重心を起こす事で、馬自体に踏ん張ってもらう体勢を作るんですね。これが、後ろ重心になります。
前重心と、後ろ重心では、例えば同じ駈歩でも、姿勢が異なります。
求める内容によって、使い分けが出来れば、乗馬の腕も上級者レベルです。
前重心のメリット・デメリット
前重心のメリットとデメリットは、以下の通りです。
- メリットその1:本来の姿勢だから、馬が楽
- デメリットその1:加速していく馬は注意
- デメリットその2:人馬ともに姿勢が崩れやすい
解説していきましょう。
前重心のメリットは1つですが、その1つが、とても重要になります。本来の姿勢だから、馬が楽という事です。
先程も言ったように、馬は本来前重心の動物です。なので、前重心のままで良いよと許してもらえるのは、馬にとってとても楽な姿勢になります。
全ての馬の中で、乗ってて一番楽なのが、前重心だけどゆったりとしている馬です。乗馬施設で、速歩や駈歩がスイスイ続いて乗りやすいと言われる馬は、ほとんどがこのタイプの馬だと思います。
初心者用の馬としていてほしいタイプですね。
自然なバランスで頭を下げる馬には、2種類のタイプが存在します。
・楽をしたいから頭を下げている馬
・前に行きたいから首を伸ばしている馬 ですね。
このうち、前に行きたい馬を楽にしてしまうと、どんどん加速していきます。これは、初心者にとって怖い事です。
正直、この加減が、なかなか難しいんですよ。馬が苦しそうだから手綱は楽にしたいけど、でも楽にすると走っちゃうという、乗り手を迷わせる馬がこのタイプです。
最低限、人間が求める制限速度は守ってもらいましょう。
馬はもともと前重心の動物なので、頭を下げていても、普通に歩いていたら転ぶことはありません。
ですが、乗馬の場合は、人を背中に乗せています。人の重さを支えながら歩いていたら、いつもよりバランスを崩しやすいんですね。つまずきやすいと言われる馬も、前重心の馬が多いです。
また、頭が下がったり、つまずいたりすると、背中の人間もバランスを崩します。馬が楽とはいえ、それで転んでしまったら意味がありません。
馬の前重心を許してあげる時でも、最低限のバランスは、人間が決めてあげましょう。
前重心のメリット・デメリット
後ろ重心のメリットとデメリットは、以下の通りです。
- メリットその1:後ろ脚を踏ん張らせる事が出来る
- メリットその2:馬の中央に重心を持ってこれる
- メリットその3:ペースの調節がしやすい
- デメリットその1:前に進まなくなる
解説していきましょう。
特にブリティッシュ馬術において、後ろ脚を踏ん張らせる事はとても重要になってきます。
前脚を軽くする事で、体を持ち上げる事が可能になり、それが、障害の飛越や、その場での駈歩などの高等技術に繋がってきます。
馬術競技に出てくる馬のほとんどが、後ろ重心のバランスでも前に進み続けるよう、高度なトレーニングを受けています。結果として、前に走りながら後ろ脚を踏ん張って、高度な技を出すわけですね。
また、ゆっくりのペースでも、踏ん張った動きが出来るため、このタイプの馬は、初心者レベルの駈歩などでも非常に活躍します。
繰り返しになりますが、馬の重心は基本的に前に流れています。
馬という箱があったとしたら、重心は中央ではないんですね。少し前にズレてるんですよ。
これを、重心を起こして中央に持ってくる事によって、初めて馬は4本脚を均等に踏ん張れるようになります。(解説動画04:15参照)
すると、横歩きをする運動など、どの方向にもパワーを向ける事が可能になります。
野球の守備や、テニスプレイヤーを想像していただきたいのですが、前かがみになりながら、横方向や後ろ方向にダッシュは出来ません。重心が中央にあるからこそ、出来る事です。
前に進む以外のテクニックを馬に求める時に、非常に効果を発揮します。だから、馬術が難しくなるほど、重心を起こす技術を習うようになるんです。
体が前のめりじゃないので、前重心の馬のように、引っ張り返されてズルズル進んでしまうという事はありません。その分、ブレーキが利きやすくなってます。
そんな良い事ばかりの後ろ重心の馬ですが、1つだけ、とても難しいデメリットがあります。それは、前に進まなくなるという事です。
本来、馬が持っている「前」という流れを、ストップしているという事なので、「パワーを前に流す」というとても高度な技術を使わないと、前に進まなくなります。これが難しいんですね。
乗り手のちょっとしたバランスの変化や、ブレーキにもならない程度の緊張でも、ブレーキと認知して止まる事があります。
よくよく考えてみれば、「重心は後ろだけど、前には進んでね」という事自体が、とても無茶ぶりですからね。「進まない」ではなく、「進めない」です。
よほど乗り手がサポートをしてあげるか、よほど苦しい体勢でも走れるように調教された馬しか、後ろ重心で前に進む事は出来ません。
まとめ!
今回は、前重心、後ろ重心で馬を走らせるメリット・デメリットについて解説しました!
どちらにもメリット、デメリットがあり、何を練習したいかによって、一番適した馬は変わります。
まとめると、こんな感じですね。
前重心の馬に乗った方が良い時
・動いてくれる馬に乗って、姿勢を覚えたい
・進んじゃう馬でも止められるようになりたい
・馬のパワーを溜める技術を覚えたい
後ろ重心の馬に乗った方が良い時
・高度な技術を習いたい
・走られるくらいなら、止まる馬の方が良い
・自分で踏ん張ってくれる馬なら、駈歩練習に
個人的に、初心者の方は、自分から前に進んでくれる馬で練習をするのが良いでしょう。
また、今回の内容と、ほとんど同じような事を話してる記事があります。そちらは今回のような、「馬の形」ではなく、「乗り手の発進指示」に注目したものです。
速歩、駈歩の役に立つ!2種類の発進を使い分けよう!もともとの馬のタイプと、僕たちの発進指示を組み合わせる事で、初めて適切な発進が出来るようになってきます。
まずは自分が安心できるのが先ですが、徐々に慣れてきたら、馬のタイプも考慮しながら、乗ってあげて下さいね。
ご覧いただき、ありがとうございました!