
馬がすごい力強いんだけど…!この状態で乗ってて良いの?上手に乗れる人は、どうやってこんな馬を抑えてるの?
そんな疑問にお答えします!
レッスン中のトラブルとして特に困るのが、自分が扱える以上に馬が元気な時です。
今回は、元気な馬の対処法の初級編をお話ししたいと思います!
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はじめに:無理はしない事

基本的に元気な馬は、扱える自信がなければ乗るのを止めましょう。
馬という生き物が本気で暴れ始めたら、僕たち人間の手には負えません。よほどの技術を持っていない限り、コントロールは不可能です。
また、走らないように走らないようにと堅苦しく身構えているのが、余計に馬のストレスになる事も有り得ます。
間違っても、チャレンジでやらないで下さい。
ただ、だからといって避けてばかりじゃ、一生対応が出来ないのも事実です。
障害馬術にしても馬場馬術にしても、ある程度以上のレベルまで行くと、意図的に馬にパワーを出してもらう事もあります。元気な馬の制御は、いずれ通る道なのは事実です。
今回は馬力を出した馬に対応する際の初歩的な方法をお伝えしますが、くれぐれも無理はしないようにしてください。
なお、対応する前提として、そもそも馬がどれくらい元気なのかを確認する必要が出てきます。前知識としてこの記事をご覧いただけると、参考になると思います。
元気な馬の対処法

今回紹介する、元気な馬への対処法は5つです。
- 馬のターンにさせない
- 抜くところは抜く
- 刺激を与えない乗り方をする
- 絶対に壁を壊されない
- 余裕を忘れない
1つずつ解説していきましょう。
馬の自由な時間にせず、頭の片隅では乗り手を意識させておく、という事です。
基本的に、馬の集中力は長持ちしません。しっかり指示をしていても10分ちょっと、何も指示をしていなければたぶん2分と持たないと思います。
だからこそ、レッスンにはメリハリが必要です。楽な時間がなく、レッスン中ずっと人間に集中してもらうのは、馬からしても苦痛なんです。
ですが、馬が元気だった場合は状況が違います。
頭の中は「なんとかして体のエネルギーを発散させたい」という気持ちでいっぱいの馬を好きにさせてしまったら、確実に危険を招きます。
普段以上に指示を送り続け、人間を頭から消してはいけません。
歩く速度、首の角度、足の上げ方、内方姿勢、他の馬との馬間距離など、細かい事まで全部指示をしましょう。頭に絶えず人間の存在を送り込んであげて下さい。
逆に言えば、この時に馬の正しい形がイメージできない人は、元気な馬の対処はしない方が良いと思います。
いくら指示を送り続けるとはいえ、その1つ1つが意味不明だったら、馬は余計に怒り始めますよ。
とはいえ、力が溜まっていながらも指示を聞いてくれている時に、更に指示を加え続ける必要はありません。
動きこそ機敏かもしれませんが、求められた指示を聞いてくれている場合は、馬を楽にしてあげましょう。
ただ、ここで言う「馬を楽にする」は、「馬を解放する」ではありません。「一度、馬に任せる」です。馬のターンにはしてはいけません。
元気な馬は、僕たち以外の刺激にも反応してエネルギーを爆発させる可能性があります。人間はいつでもコントロール状態に戻せる必要がある事を忘れないで下さい。
元気なのが分かっているのに、僕たちから更に刺激を与える必要はありません。
手綱を急に引っ張る。背中にドカドカ座る。怖いから思い切りしがみつく。これらの行動は、元気な馬に乗っている時は基本的に禁止です。
ただ、その為には馬の助けを借りず、自分の体を自分で制御出来なければいけません。
軽速歩の立ち上がりを馬に助けてもらってる人は、自分の筋肉でお尻の重さを支えられませんし、自分でバランスを調整できない人は、馬体を挟んだり手綱を引っ張ったりと馬に負担をかける事になります。
馬に走るなと言うからには、人間が送っている圧力を0にする必要があります。これが、元気な馬のコントロールが難しい理由です。
初めて聞く方もいると思いますが、一番重要な考え方です。
簡単に言うと、馬の好きにさせないという事です。
例えば部班でのレッスン中、時速5kmで速歩をしていたとします。
ところが、あなたが乗ってる馬は時速8kmで走りたがっています。元気なのか、一番楽なペースが時速8kmなのかは分かりませんが、あなたの指示以上に活発になっています。さあ、どうしましょう?
この時、一番正しい対応は、「それでも時速5kmを守らせる」です。もし速歩を出した事がきっかけで「待ってました」と加速するのなら、そもそも走らせてはいけません。
一度でも自分の思い通りになった馬は、もう一度同じ事をすれば思い通りになれると思います。
首を振って手綱を引っ張る馬や、口に敏感に反応して首を上げる馬も含め、全てはそれをしたら楽になったという経験を積ませた結果、その行為を繰り返してます。
また、この人間はわがままをし続けたらそれを許してくれた、という経験にもなってしまいます。そうすると、以降あなたをリーダーとしては見ようとしません。
特に、人間を頭から消して自分の好きな事をしようとしている元気な馬については、僕たちが求めた状態は絶対に守らせないといけないのです。
厄介なのは、そうする事で馬との意見のぶつかり合いが起こるという事です。馬は8km、人間は5kmという対立が発生します。
ただ、ここで馬に負けると、以降はずっと馬のターンになってしまいます。
無理やり力づくでも勝てとは言いません。負けなければ良いんです。せめてあいこにして、立場を対等に保つ必要があります。
幸い、馬はずっと主張をする動物ではありません。釣りで竿に引っかかった魚ではないですが、主張をして、休憩をしてを交互に行います。
主張には駄目だと言いつつ、休憩してこちらの主張に耳を傾けてる時は楽にするを繰り返してあげて下さい。これを、専門用語で折り合いと言います。ぜひ覚えていきましょう。
「大きく構える」という言葉や「背中が広い」という言葉がたくましさや頼りがいという意味に繋がるように、人間側の余裕は、馬に指示を聞いてもらう上で必須条件です。
仕事に例えても、上司が慌てながら必死に指示をしてるのと、堂々と指示をするのでは、なんとも頼りがいが違うものです。それは馬も同じです。
この余裕が、馬の状態を観察する上で非常に役に立ちます。余計な指示をしない、馬の休憩を見極められるなど、視野の広さに繋がっていきます。
こればかりは経験を重ねないと身に付かないものではありますが、馬以上に慌ててちゃいけないんだなと覚えておいてください。
まとめ!
今回は、元気な馬の対処法について解説をしました。
改めて、無理に元気な馬の対応をする必要はありません。
今回は基本的な内容をお話ししましたが、身を引くのも重要な判断です。その時上手く乗れなくても、後々上手く乗れるようになれば良いんです。
話を聞いていて感じたかもしれませんが、元気な馬の対処は、取り扱い説明書的なマニュアルはありません。内方姿勢を作って、外方脚を後ろに引いたら駈歩発進のような、「こうすれば良い」という正解はありません。
また、「壁」、「折り合い」、「抜く」、「人間のターン」など、ハッキリと言葉で説明できない考え方が多数出てきます。後々個別に解説しますが、これらは初心者の方には非常に難しいです。
まずは馬に一切負担をかけず、自分の身体能力だけで馬に乗れるようになりましょう。現に最もパワフルな現役競走馬を扱うジョッキーさんたちは、常にトレーニングをしています。
乗り手が悪い事をしているわけじゃないという自信が付いて、初めて「今あなたがやっている事が違うんでしょ」馬に言えるようになります。一緒に頑張っていきましょう!
ご覧いただき、ありがとうございました!