近頃、とある馬ゲームが大流行しています。
それがこちら、『ウマ娘 プリティーダービー』です。
僕自身、リリースする前は「一部の馬好きがハマるんだろうなぁ…」と思っていました。ただ、フタを開けてみれば馬を知らない人にも大ヒット!
制服姿の女子高生グループの口から、マルゼンスキーなんて70年代の名馬の名前が出てきた時は、すごい時代になったなぁと思いました。
ただ、これまで馬の事を知らなかった人が入ってきた事で、ちょっとした弊害も出てきてます。
そのうちの一つとして挙げられるのが、牧場見学マナーについてですね。
今回は、馬の牧場を見学する際のマナーについてお話ししていきたいと思います!
牧場見学の9箇条
今回紹介するのは、『競走馬のふるさと案内所』様のホームページに記載されている、「牧場見学の9箇条」になります。
具体的には、ご覧の通りです。これらを、僕の解釈も交えながら紹介していきます。
- 見学できるかは、競走馬のふるさと案内所に確認しよう
- 見学時間も、競走馬のふるさと案内所に確認しよう
- 牧場では、関係者の指示に従う事
- 厩舎や放牧地に無断で立ち入らない
- 大きな声や音を出さない
- 危険なので、馬には触らない
- 牧場内は禁煙
- フラッシュ撮影は禁止
- 絶対に食べ物を与えない
なお、パパっと見たい方は、こちらから競走馬のふるさと案内所様のホームページをご覧ください。
「競走馬のふるさと案内所」様は、馬産地の情報や、引退馬の近況を教えてくださる団体です。
北海道だけでなく、青森、千葉、鹿児島など、各地方に6つの事務所があります。
馬を見に行きたいと思った場合、まずはここに、必ず連絡を入れましょう。
というのも、直接牧場に連絡しても、対応出来ない場合があるからです。
ほとんどの競走馬育成牧場は、「観光牧場」としては営業していません。
あくまで、馬を育てるという「仕事の場所」になります。
先日、僕はtwitterで、牧場を芸能事務所と例えました。
憧れの存在がいるのは分かります。でも、その場所って皆さんに見せるための場所ではありませんし、彼らは彼らで生活や仕事をしてるんです。
そのため、お客様専用窓口や、対応専用のスタッフを設けていない場合が多いです。
皆さん、馬の世話に集中しています。
だからこそ、その仲介役をしてくださっている、競走馬のふるさと案内所様に連絡をしてほしいんです。
ここは、その案内を業務にしています。そのため、皆さんにも時間をとって丁寧に対応する事が可能です。
そもそも、牧場によっては、見学自体が不可能な場合があります。
何も連絡をしないで行くのはスタッフの方も困りますし、せっかく遠出をしたのに拒否をされた皆様もショックだと思います。そんな事態を防ぐために、事前に必ず連絡をして下さい。
仮に見学出来たとして、その時間は、施設によって様々です。
調教見学なら、朝の5時に現地集合と平気で言われます。ちなみに、有名な社台スタリオンステーションの放牧見学時間は、10時~12時の2時間の場合が多いです。
また、その時間に該当していたとしても、繁殖シーズンなどで、見学出来ない期間になっている場合もあります。
それらを確認するためにも、競走馬のふるさと案内所にご連絡ください。
これらは当たり前ですが、時間が指定されているという事は、その時間しか馬を見せる事が出来ないという意味です。
それ以外の時間はご飯や調教、種付け、出張など、馬には馬の仕事があります。
突然施設に押しかけ、「ただ小屋に居るのを見るだけで良いから!」なんてワガママを言うのは絶対に止めましょう。
個人のワガママで、馬や会社は特別な行動など出来ません。会いたいのなら、自分がルールの範囲内で行動してください。
牧場によって、見学時の注意が違う場合があります。
これ以上近づいちゃダメという距離。見学するルートの指定。ここから先は立ち入り禁止。これらは、馬と皆さんを守るために定められたルールです。
牧場に到着したら、必ずスタッフの方に声をかけ、見学に来ましたとお伝えください。
そして、スタッフの方の指示に従いましょう。
また、先程も言ったように、牧場は観光目的で運営されてない場合が多いです。
つまり、多くの施設では、見学者の案内は、業務外のお仕事になります。
時間を割いていただいてる事、牧場の財産である馬を見せていただいてる事に感謝をし、見学が終わったらお礼をして下さいね。
厩舎はスタッフの方の仕事場であり、放牧地は馬のプライベートな空間です。
馬に近づきたいからと言って、厩舎や放牧地に入るのは止めましょう。
ましてや、それで怪我などしたら、その牧場や馬は責任をとる必要が出てきます。
そうなれば、その馬や牧場の今後を壊してしまいます。「自分は大丈夫」ではなく、周囲のために、止めて下さい。
見学の前には必ず、スタッフの方に声をかけ、見学希望の旨を伝えましょう。
通るコースや、入って良い場所は、事前に教えてもらえるはずです。
逆に言えば、入ってはいけない場所に入って起きた出来事は、牧場側も責任を負えません。
余計な気苦労や迷惑をおかけしないよう、決められた範囲内で見学をしましょう。
馬は非常に敏感で、臆病な動物です。
馬と接した事がある人からすれば当たり前の事ですが、人間からしたら「これっぽっちで?」というレベルの出来事で、パニックになったりします。
そして、一度パニックになった馬は頭の中が緊急事態になり、我を忘れて走り回ったり、暴れたりします。
結果、要らぬ事故を招く原因になります。
過去、ファンの方が驚かせた事が原因でパニックになり、そのまま転倒やラチに激突。骨折し、安楽死になった事例がいくつもあります。
そのような出来事を起こさないためにも、馬を刺激しないようにして下さい。
大きな声や音以外にも、素早く動いたり、大きく手を振ったりする事は止めましょう。
自分たちに気づいてもらいたい、こっちを向いてもらいたいという気持ちは、とてもよく分かります。ただ、行動には移さないで下さい。自然のままの名馬を見るようにしましょう。
馬はとても格好良く、そして可愛い動物です。
ましてや名馬になると、これが本物の〇〇かーという興奮も重なり、触ってみたくなります。
こちらも気持ちはよく分かります。ただ、行動には移さないようにしましょう。
というのも、牧場にいる馬は乗馬クラブの馬と違い、知らない人に触られる訓練を受けてないからです。
そもそも競走馬と乗用馬では、求められるルールが違います。多くの乗用馬が、「悪い事をしないように」と教わるのに対し、競走馬は、「人に構わず全力を出せ。落ちたらスタッフ側が悪い」と教わっています。
仮に人に迷惑をかけようが、それでレースに勝てば、競走馬は名馬と言われるんです。
つまり、競走馬は人間に対して、感情や気持ちを我慢するよう教わっていません。
嫌な物は嫌。怖い物は怖い。全力でそう表現をしますし、危険な存在は排除しようとします。そのためには人間でも、噛んだり蹴ったりしてきます。
あまり周知はされていませんが、馬にも縄張り意識があり、放牧地に近づいただけで反応する馬も居ます。
中でも、良い意味で血気盛んな種牡馬や、仔馬が生まれたばかりの母馬は、攻撃的になりやすいです。
だからこそ、不用意に近づいてはいけないのです。
ウマ娘から入った人は、ゴールドシップの傍若無人っぷりが全て自分に向けられると言えば、下手に馬を刺激する危なさが分かると思います。
こんな話をすると、馬が怖くなるという人も居るでしょう。
ただ、馬には確実にそんな一面があり、特に競走馬はその気持ちを強く持つよう育てられます。
その爆発的な気性があったから、レースで気持ちを爆発させ、活躍できたのです。
強みとも言える気性を、一般の方のために削いだりはしません。つまり、僕たち側がルールを守り、安全策をとるしかないんです。
噛まれた事で大きいリアクションや声を出した→馬もパニックになった→人も馬も大怪我。
そうなったら、皆さんも牧場も大打撃です。絶対に触らないようにしましょう。
周りの木々に芝生、餌となる草に敷き藁など、牧場には燃えやすい物が多数存在します。
そのため、間違ってもタバコは吸わないようにして下さい。大規模火災の原因に繋がります。
見学者のマナーとは少し話が違いますが、昨年は多くの牧場や乗馬クラブで、施設火災が相次ぎました。
そのような悲劇をもう起こさないためにも、ご理解とご協力をお願いします。
また、馬はビニール袋や紙くずが風に舞うだけでも、驚いてパニックになるものです。
合わせて、ゴミはなるべく出さないようにしましょう。また、出したとしたら必ず持ち帰りましょう。
瞬間的な強い光は、動物を驚かす一番の要因です。
競馬場のパドックでもフラッシュ撮影禁止の看板が掲げられているように、基本的に馬の撮影では、フラッシュは禁止です。
馬に限らず、水族館では、フラッシュ撮影の光を目にしたマグロが驚き、水槽の壁に激突して死亡した事例があります。
禁止と言われたら禁止です。他の項目も重要ですが、特にこの項目は厳守してください。
また、どうやら自撮り棒も、馬が驚く原因となるようです。
フラッシュ撮影ではなくとも、こちらの使用も控えていただければ幸いです。
他にも、太陽の光が反射するようなアクセサリーなどは、外しておくのが賢明ですよ。
牧場の馬は、どの立場の馬でも、徹底した食事管理をされています。
栄養はもちろん、食べ物の配合やカロリーなど、スタッフの方はグラム単位で馬の食事に気を配っています。
「大好きな馬に喜んでもらいたい」と、餌をあげたくなる気持ちは、とてもよく分かります。
ただ、その馬のためにも、気持ちはグッとこらえ、静かに見守ってあげて下さい。
また、食べ物を与えないのは、衛生管理としても重要になってきます。
牧場は、外部から病気を持ってこないよう、徹底した消毒を行ってます。きっと皆さんも、靴の裏の消毒などをする事になるでしょう。
そんな中で、外部から持ち込んだ食べ物を与えてしまうと、それだけで取り組みが水の泡になる場合があります。
悪気は無いのですが、結果的にそうなってしまえば、それはあげた側の責任になってしまいます。改めて、食べ物は与えないようにしてくださいね。
まとめ!
今回は、牧場を見学する際のマナーについての動画でした!
一言でまとめてしまえば、「競走馬のふるさと案内所様に連絡をし、その指示やスタッフの案内にきちんと従いましょう」ですね。
僕自身、オグリキャップやサイレンススズカのお墓参りをした時は感動しました。また、社台スタリオンの厩舎を見学させていただいた時は、本当に興奮しました。
かつて活躍した名馬を実際に見てみたいという気持ちは、一競馬ファンとして、僕もよく分かります。
ただ、分かってほしいのは、競走馬にはとんでもない価値があるという事です。
合わせて、僕たちの常識と、馬の常識は違うという事です。
僕たちが何気なくやった事が馬を驚かし、それで怪我でもさせたら、場合によっては億単位の被害になります。
本人に悪気が無くとも、そんなトラブルが起こる可能性があるのです。
90年代にオグリキャップが大人気になった時も、今と同じように競馬を知らなかったファンが急に牧場に押しかけたため、公開を取りやめた牧場が増えました。
また、七冠馬テイエムオペラオーは、生前、見学者のマナー違反が相次ぎ、途中から公開中止になっています。
どの世界もそうですが、緩い状態で守らなければ、どんどんルールは厳しくなっていくのです。
だからこそ、これ以上環境を悪くしないためにも、今あるルールを守って下さいね。
せっかくの「馬が好き」という気持ちです。
馬の事を考え、引退後の良い環境づくりを手伝っていただければ嬉しいです…!
ご覧いただき、ありがとうございました!