ハミを入れ替えろって言われたけど、よく分からない。どんな意味があるの?やり方は?
そんな疑問にお答えします!
今回は、ハミの掛け替えの効果と、その手順について解説します!
ハミの掛け替えとは
結論だけ言うと、ハミの掛け替えは、馬に「区切り」を認識させる目的で行います。
ハミ受けのように、馬の体勢に影響を与える技術ではありません。そのため、「使ったから馬の体勢やスピードが変わる」というものではないです。
ただ、口の中でハミの圧力が変わったり、かかってる場所が変わったりしたら、馬も「何かあるな?」とは気づきますよね。
その結果、人間に再度意識を向けたり、走り方のギアを変えたりするきっかけになる。これが、ハミの掛け替えの効果です。
競馬ではけっこう頻繁に行われる技術で、ハミの当たり具合を楽にしたり、強めたりする事で、馬に勝負どころを認識させたりしています。
馬を追ってる最中に、腕を横に開く瞬間がありますが、これは手綱の持ち替えと、ハミの掛け替えを同時に行ってるんですよ。
ハミの掛け替えを行うタイミング
ハミの掛け替えを行うタイミングは、大きく分けて3つです。
- 手綱を引きっぱなしになった時
- 歩様を変える時
- 人間に注意を促す時
それぞれ解説していきましょう。
基本的に馬は、ハミをかけられて良い気持ちにはなりません。
ハミが当たってるのが嫌だから首を振って振り解こうとしますし、引っ張る行為がブレーキに繋がってます。
ところが、馬が一定以上に「前に行きたい」という気持ちを持つと、ハミという存在は、逆に好都合になります。
なぜなら、首の筋肉を踏ん張るサポートになりますし、思い切り前のめりになっても、人に引っ張ってもらえばバランスを支えてもらえるからです。
例えば「綱引き」って、全体重をかけて綱を引っ張っても、僕たちは後ろに転びませんよね。
それは、自分が後ろに倒れる力と同じくらい、相手チームによって綱が引っ張られてるからです。
前に行きたい馬の場合、この「綱」の役目を、ハミや手綱がしてしまいます。
結果、馬が自分のバランスを人間に依存するようになるんです。
「前の馬以上に元気だからずっと手綱を引っ張ってるけど止まらない。腕が痺れた。」という経験がある人は多いと思います。
あれは、これが原因です。ブレーキのつもりで引いてる手綱が、逆に馬を支えてしまってるんです。
すぐつまずく馬の頭を引っ張っているのに、起きないどころか余計に重くなるのも、これが原因です。
「自分でバランスを取らなくても、人間が支えてくれるや」と思った馬が、余計に体重を預けてるんです。
そこで必要になってくるのが、ハミの掛け替えです。
ハミという綱を一瞬ゼロにして、馬に「転ぶ!」と思わせる事で、人間に依存しない馬自身のバランスを求める事が出来ます。
ただ、ハミを楽にすると同時に「スタート!」と走る可能性もあるので、事前のアプローチが必要です。忘れないようにしましょう。
先程の例えで言う「綱」を、あえて作るアプローチです。
一定以上前に出ない馬に、ハミという支えを作る事で、前に踏み込んでもらう方法ですね。
レッスン中、「発進の準備」と言われれば、誰もが手綱を短くしますよね。
手綱を短くすれば、ハミも口に掛かります。実はあの号令は、「走っていかないようにブレーキの準備をしておきましょう」という意味だけでなく、このような「馬を支える準備をしましょう」という意味もあるんです。
ただ、加減を間違えると、馬を引っ張る事になり、余計に馬の減速を招きます。
こちらも、正しいアプローチを覚えていきましょう。
純粋に口の中でハミがガチャガチャしていれば、馬はハミに意識が向きます。
オーバーにはやってほしくないですが、これもハミの掛け替えの効果です。
指示の前に人間への集中度を再確認したり、虫に持ってかれた意識を人間に向け直したりする時に使います。
ちょっと刺激を与えるだけで反応してくれる馬なら、これだけ我に返ってくれます。
具体的なやり方
では、具体的にハミの掛け替えとは何をするのでしょうか?
少々難しいのですが、個人的には、こんな感じだと思っています。
- ハミを揺すってみる
- ハミの圧力を0にする
- 一気にではないが、スムーズにハミを掛け直す
解説していきましょう。
ハミに反応してくれる馬なら、わざわざ掛け直しをする必要もありません。
口の中のハミをちょっと揺すって、馬の様子を確認しましょう。
やり方は、軽く拳を揺すったり、手招きする程度の力で手綱をクイクイ引いてみるだけです。
それで反応するようなら、これ以降はやらなくても大丈夫です。
逆に反応しないようなら、関係のリセットを行います。
先程例えた綱引きで言うなら、「引っ張り合う状態の前に戻す」という意味ですね。
手綱って、馬だけが引いたら暴走、人だけが引いたら後退になります。
じゃあ釣り合ってれば良いの?という話ですが、止まらない状態で釣り合ってても、それは止まらないままです。
そのため、馬の状態をリセットするなら、馬と人の両方が0である事が大事です。
これをして初めて、馬と人が自立したバランスを持つ事が出来ます。
やる事は簡単です。それまで引っ張ってた力を抜き、ハミが当たってるだけの状態に戻すだけです。
騎乗直後の、まだ馬も進まず、人も引いてない時と同じようなバランスにしてください。お互いがお互いに頼らずとも、バランスがとれる状態を作りましょう。
ただ、そうも言えない状態も1つだけあります。それが、「馬が手綱に依存しきってる時」です。
「圧力0にするんでしょ?」と手綱を楽にした途端、つまずいたり走りだしたりする危険がある場合、いきなりハミを0にする事は出来ません。
その際は一度、馬のパワー以上に引っ張ってしまって下さい。
馬が止まっても構わないです。5だったら10,10だったら15くらいのパワーで引き返して下さい。
この時、馬の力より強めに引っ張るようにしましょう。
その、「強めにバランスを戻した分」が、その後に拳を楽に出来る時間に繋がります。
10のパワーに対してちょうど10引っ張っていては、放した瞬間に馬は前のめりに戻っていきます。これでは、拳を休める暇もありません。
肝心なのは、「全力で手綱を引いても止まらない」という状態になる前に、この対応をする事です。
僕も競走馬で経験しましたが、ある程度以上馬が加速すると、楽にするとかもっと引っ張るとか言ってられなくなります。放したら終わりって分かりますし、そもそも引き返せなくなりますからね。
まだ余裕があるうちに、早めに対応をしておいてください。
馬が力で勝負をしてくる前に、このやりとりは終わらせておきましょう。
詳しくは、こちらの記事で解説しています。興味があれば、ご覧ください。
勝手に後退する理由は?馬の力の抜き方と、制限速度の作り方
ハミの圧力が0になったら、再度ハミを掛け直します。
ただ、この時に気を付けて欲しいのが、ハミの当て方です。
というのも、いきなり引っ張れば馬の口にショックを与えてしまいますし、だからと言ってゆっくりだと、その間に前に進みたい馬は加速していくからです。
一気に引っ掛けるではありませんが、手早くハミを当て直さないといけません。
個人的には、手綱の持ち替えの早さが重要だと思います。
というのも、「一気に引っ張る」という言葉は、腕をたたまないと出来ないからです。
腕の角度をそのままにして手綱を手早く巻き取っていけば、「一気に」という印象はありません。
また、それだけ手先を細かく使えれば、指への手応えから、馬の口の感覚も分かると思います。
馬がハミに依存しないよう、「張ってるけど、支えすぎない」という状態をキープしてください。
ここでまた馬がハミに乗りすぎるようなら、圧力を0にする→ハミを掛け直すの繰り返しです。
なお、進まない馬の支えを作りたい場合は、ここから更にやる事があります。
それについては、こちらの記事で解説しています。興味があれば、ご覧ください。
半減却を覚えよう!その3:ハミと拳で推進を受け止める
まとめ!
今回は、ハミの掛け替えについて解説をしました!
改めて、ハミの掛け替えは、馬に「区切り」を意識させるものです。
加減を考えつつ、要所要所で使っていきましょう。
ハミの掛け替えに限らず、「この馬は今、自分の手の内にいるのかな?」というチェックは、細かく行うべきです。
完璧な騎乗が出来ても、「全て馬がやってくれました!」では、自分の実力にはなりません。余裕を持って、馬の状態を観察できるようになりましょう…!
ご覧いただき、ありがとうございました!