レッスン中、指示をしてもいないのに、馬が後ろに下がる…!どうして?何か悪い事でもしちゃった?
そんな疑問にお答えします!
今回は、馬が後ろに下がる理由と、対策について解説しますね!
馬が後ろに下がる理由
馬が勝手に下がっていく理由は、大きく分けて3つです。
- 後ろの馬が近い
- 前に行けない状態になっている
- 馬のわがまま
後ろの馬が近いについては、皆さんじゃどうしようもありませんが、残りの2つは乗り手で対応できる問題です。
中でも、「前に行けない状態になっている」は、初心者の方のレッスンでも起きやすい問題です。今回は、この項目について解説をしたいと思います。
馬のわがままについても対処法はありますが、わがまま以上に乗り手の主張を伝えるという、馬に遠慮をしがちな初心者の方には難しいものとなっています。そちらは後程、別の記事で解説したいと思います。
「前に行けない状態」の、2つの可能性
さて、前に行けない状態とは、言葉の通り、馬の行く気以上に、人間がブレーキの指示をしている状態の事を言います。
手綱が短すぎて引っ張られてたり、ガチガチにしがみついてるから苦しかったりなどですね。このように乗り手が原因の時は、僕たち教える側が、一つ一つの項目を教えれば解決します。
ただ、この「前に行けない状態」は、もう一つの可能性あります。
それは、「馬が元気すぎて、周りの馬よりも走りたがっている」です。
例えば、レッスンは時速5kmの速度で進行しているにも関わらず、自分が乗っている馬が時速8kmで走りたがっていたら、僕たちは時速3km分、常にブレーキをかけますよね。
これも、馬の行く気以上に人間がブレーキの指示をしている状態じゃないですか。前に行けない状態なんですね。
このような馬は、自分の思い通りにパワーを出す事で、頭が一杯になってます。ブレーキをかけられても、それを突き破るつもりで体重を乗せたり、首を振ったりして、なんとか乗り手の壁を突破しようとします。
こんな時、皆さんだったらどうしますか?中には、楽にされたら走っていっちゃうからと、しっかりと手綱を持って、馬を抑え込もうとする方もいると思います。
それで、止まってくれたら万事解決なんですよ。ですが、それでもエネルギーが我慢できなかった馬って、何をすると思いますか?
前に行けなかったら、後ろにエネルギーを出そうと、後ろに下がっていくんですね。これが、馬が勝手に後退していく理由です。
対策:楽をさせつつ、制限速度を守らせる
とは言っても、そしたらどうすれば良いんだって話しじゃないですか。
楽にしたら、どんどん前に走られて、我慢させたら後ろに下がっていく。これじゃあ、乗り手はどうしようもありません。
そんな時の対策が、一つだけ存在します。
それは、「馬を楽にさせつつ、制限速度だけは守らせる」です。
馬は、体を大きく使う事で、体の中のエネルギーを発散します。だからテンションが上がった馬は、鼻息を大きくしたり、尻尾や首を振ったりするんですね。走るのも、その行動の1つです。
ガチガチのブレーキで馬を窮屈にして、エネルギーの逃げ場所を作らないのは、やってはいけない事です。ブレーキを意識させつつも、エネルギーの発散を、同時に行う必要があるんですね。
そのため、ずっと我慢をさせるのではなく、皆さんの求める制限速度を超えた時だけ、ブレーキをかけるんです。そうすると、制限速度を超えない範囲で、馬は体を大きく使って、力を消化していくんですね。
これを、馬の専門用語で「抜く」といいます。馬術だけでなく、競馬でも使われるテクニックの1つです。
注意
これから、制限速度の守らせ方について解説していきますが、まずは守ってもらいたい事があります。それは、興味本位で、元気な馬にはチャレンジしないという事です。
僕の記事では繰り返し話していますが、馬は本気で暴れたら、人間の手には負えません。興味本位でチャレンジをするものではないです。
今回は、身近に起きるトラブルの原因と対処法として、知識はお伝えしていきますが、チャレンジを推奨するものではありません。ご理解いただければと思います。
制限速度を守らせるポイント
制限速度を守らせるポイントは、3つです。
- 馬に負荷をかけない
- 超えたらブレーキではなく、超える前に減速をする
- 中途半端にではなく、しっかり楽にさせる
1つずつ、解説していきましょう。
簡単に言いますが、これが一番難しいです。
ただでさえエネルギーが溜まっているのに、僕たちが負担をかけたら、馬はその負担に対応しようと、余計にパワーを踏ん張ります。自分のバランスは、全て自分でなんとかするつもりでいましょう。
ハミをかけすぎてないか、背中にドスドス座ってないかなど、1つ1つの負担要素を無くしていきましょう。
例えば時速5kmで走りたいとします。
この時、5kmになるまで何もせず、5.1kmになった瞬間にブレーキをかけた場合、たった0.1kmですが、スピードをオーバーされた事実には変わらないわけですね。
スピードをオーバーされるという事は、前方向に体重をかけられるという事です。馬は500kgもある動物なので、前に体重を傾けられた段階で、引っ張り返すのは難しいでしょう。
8kmになった馬を5kmに戻すのも、5kmになった馬2kmに戻すのも、やる事は同じ「3km分引っ張る」です。
何回体勢を戻しても、また加速しようとしますが、馬が前のめりになる前に減速をして、体を起こしましょう。
また、最初にお話ししたように、元気な馬に乗る場合は、エネルギーを発散する「楽な時間」が必要になります。
先程の例えのように、制限時速を超える前の減速を使って、5kmになった瞬間に、2kmに戻したとしましょう。そうすると、2kmから5kmに上がるまでの間は、制限速度を超えてないから、馬を楽に出来ます。
ですがこの時、うまく減速が出来ず、5kmから8kmを行ったり来たりしていた場合、手綱を楽にした瞬間に5km以上にスピードが上がるから、馬を楽に出来ないんですね。
制限速度は、どんな馬で、どんなレッスン内容かで変動しますが、大事なのは、皆さんが決めたその制限速度を「超える前に」減速をする事です。
犬の散歩をしている時に、飼い主より先に行こうとした瞬間に、待ったをかけるしつけと同じです。乗り手の気持ち以上に、馬を前のめりにさせないようにしましょう。
体勢を戻したは良いものの、その後に「早くなるな」と手綱を握っていたら、馬は前には進めません。
また、体を起こしてる分だけ、後ろに行きやすい環境が出来ています。気持ちが治まってない馬は、後ろに下がっていく事で、エネルギーを発散しようとします。これでは本末転倒です。
大事なのは、馬から「前」という選択肢を奪わないまま、制限速度を守らせる事です。
そのためにも、制限時速を守ってるうちは、しっかりと楽にしてあげましょう。
ちなみに、このように、指示を聞いてくれている馬にご褒美として楽を提供する事を、専門用語で「譲る」と言います。覚えておいてくださいね。
まとめ!
今回は、元気が理由で後ろに下がる馬の解説と、制限速度を守らせる方法についてお話ししました!
改めて、競馬でも使うテクニックになりますが、馬の元気具合によっては、広い馬場で練習を始めたタイミングでも使う内容です。
ただ、こうして口で説明するのは簡単ですが、実際に元気な馬の上で、冷静な判断をするのは本当に難しいです。「抜く」、「譲る」という専門用語も出てきたように、少々高等技術になってきます。
今回の内容は、通常の馬でも意識すれば練習できる内容になってます。まずは、余裕を持てる環境で練習してくださいね。
ご覧いただき、ありがとうございました!