前進気勢って言葉を聞くけど、どういう意味なの?大事な事?難しくてよく分からない…。
そんな悩みにお答えします!
乗馬は、難しくなればなるほど、パワーを溜めるという作業が必要になってきます。
ゆっくりの駈歩や、馬場の高等技術、高い障害の飛越などは、馬の好きなように走らせていたらなかなか出来ません。馬は、自発的にそんな事をしないからです。
ですが、パワーを溜めるためには、どうしても我慢が必要になります。僕たち乗り手が、我慢を馬に求めた時、基本的に馬は、苦しいからと止まってしまいます。
そんな時に必要なのが、前進気勢なんですね。今回は、前進気勢の言葉の意味と、乗馬で求められる理由について解説したいと思います!
なお、前進気勢の作り方は、求める姿勢や我慢によって違ってきます。なので、今回の記事ではなく、前進気勢が必要なそれぞれの項目で解説したいと思います。
前進気勢とは?
前進気勢とは、一言でいうと、「前に行こうという気持ち」になります。
馬は、もともと本能として、何かあったらとにかく走るという考え方を持っています。これは、草食動物なので、色々な肉食動物に狙われるし、反撃する武器もないから、考えるより前に逃げた方が早いからです。
僕たち人間は、その本能を応用して、何かあったらとにかく「前に」走ると、馬に教え込んでます。
競馬では、全ての感情を前へのエネルギーに変えて、1着になってもらうため。乗馬や馬車馬では、重いものが乗っていても、前に動き続けてもらうためですね。
もし馬が、前以外の方向に進んでしまったり、途中で止まったりしたら、競馬も乗馬も成立しません。
全力で横に走っていく馬や、重いものが乗る度に跳ねあがる馬、苦しくなると止まる馬では、そもそも人が乗って走れないからです。
だから、何かあったら前に走ると教えるんですね。そうして出来た、馬の「前に行こう」という気持ちが、前進気勢になります。乗馬、競馬に限らず、人が馬に乗る上で重要な考え方です。
乗馬において、前進気勢が大事な理由
競馬において、前進気勢が大事なのは言うまでもありません。理由は、とにかく速く前に走って、1位になってもらいたいからですね。
では、乗馬において、どうして前進気勢が大事なのでしょうか?
理由は大きく分けて、2つになります。
- ゆっくりでも、踏ん張ってもらいたいから
- ちょっとした事で、止まってもらいたくないから
1個ずつ、解説していきましょう。
馬は、地面を蹴って、自分の体を持ち上げる事で走っています。
なので、速く走った方が、強く地面を蹴るので、体を簡単に持ち上げられます。
しかし乗馬は、競馬ほどに速く馬を走らせません。そうすると、馬に1つの矛盾が生まれます。
それは、「強くは地面を蹴っちゃいけないけど、体は持ち上げてね。」というものです。
馬は、500kg前後の体重がある動物です。その体を持ち上げたいとなると、よほど地面を強く蹴る必要があります。
ですが、乗馬では、それが許されません。何と言ったって、そんな思いきり走られたり、大きい反動を受けたりしたら、乗り手は落ちてしまいます。
なので、乗馬では、ゆっくりだけど、踏ん張ってねという、馬からしたら意味不明な指示を求める場面があります。
そんな時に、それでも頑張る!という前進気勢が必要になってきます。
乗馬初心者の方がよく悩む駈歩発進などは、前進気勢が必要な項目です。
前進気勢がない状態で体を持ち上げようとしても、「ブレーキでしょ?」と常歩になり、「そうじゃない、走るんだよ」と脚を使っても、体を持ち上げない範囲で加速をされ、元気の良い速歩になってしまいます。
大事なのは、加速でも、姿勢を起こす事でもなく、「そんな苦しい体勢でも前に走る」という、前進気勢を作る事にあります。
これが、前進気勢が大事になる理由です。
また、逆に前進気勢が強い馬は、ほんのちょっとのブレーキがあっても走り続けます。
競馬で、馬が引っかかるという、ジョッキーさんがブレーキをしているにも関わらず加速していく馬がいますが、あれも馬の前進気勢が強いからこそ起きるトラブルです。
ですが、これは、使い方によっては、メリットにもなります。例えば、障害を飛ぶ時などです。
前進気勢が無い馬は、少し不安になるような高さの障害を前にすると、不安が勝って止まってしまいます。ですが、前進気勢がある馬は、多少「無理かな?」と思っても、それでも止まりたくないからと跳んでしまうんですね。これが、思い切りの良さという面で、高評価にもなるわけです。
前進気勢が強い馬というのは、精神的にも肉体的にも困難があろうが、それでも前に走り続ける馬なんです。
個人的に思う事と、アドバイス
ところで、ここまで話していて、個人的に思う事があります。それは、この辺りから、乗馬に苦手意識を持つ方が増えるという事です。
今回の内容も、キレイに終わらせれば、「馬のお手伝いをして、前向きな気持ちを持ってもらおう」になるんですけど、悪い言い方をすれば、「何とかして、苦しがってる馬に、指示を聞いてもらおう」になります。
特に、のほほんとしている馬に、ゆったり乗っていたいという方は、この辺りから違和感を覚えるでしょう。
その違和感、本当に大事にしてほしいです。
その違和感を頼りに、馬を良い子にする調教方法を覚えるも良し。自由自在に馬に乗ってられる方法を覚えるも良し。外乗や、馬とのコミュニケーションを楽しむのも、馬との付き合い方の1つです。
現状、教科書で教える乗馬や、馬術競技が、「いかに自分の思い通りに馬を動かすか」に比重が置かれているのは事実です。
もちろん、その為には、乗り手のサポートも必要にはなりますが、そもそもその考え方に賛同できないという方がいても、別に不思議な事ではありません。
馬の世界は、もっと広いです。皆さんに合った、馬の楽しみ方を見つけて下さいね。
まとめ!
今回は、前進気勢という言葉の説明と、乗馬で求められる理由について解説しました!
ちょっと踏ん張らなきゃいけないという場面で、それでも頑張ってもらうために、前向きな気持ちを馬に持ってもらう必要があるよという事ですね。
勘違いしたらいけないのは、速く走らせたから前進気勢が生まれるというわけではありません。
確かに前への流れを作ったら、馬は流れのまま進んでくれますが、それでも、目の前に現れる困難の方が強ければ、馬は止まってしまいます。
大事なのは、馬が「これなら前に進める」と思えるようなアシストです。
馬だけに、「それでも進めよ!」というのは、傲慢以外の何物でもありません。苦しい状態だろうが、それでも大丈夫と思えるようになるためのアシストは、乗り手がしなきゃいけない義務です。
馬の体の使い方などを理解する必要があるため難しいですが、1つ1つ、馬を理解して、サポートできる事が増えるのは楽しい事だと思います。頑張って、覚えていきましょう。
ご覧いただき、ありがとうございました!